【具体例付き】アサーショントレーニングで良好な人間関係を築く方法

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「アサーション」という言葉をご存知でしょうか。これは近年のコミュニケーション手法の中で非常に注目されている考え方です。

職場や家庭でコミュニケーションをとる際にこのことに気を付けることで、自分も相手も納得感を感じられるコミュニケーションを取れるようになります。

今回はアサーションの定義について説明し、アサーションを意識したコミュニケーションのトレーニングを紹介します。

アサーションとは

アサーション(assertion)とは「人は誰でも自分の意見を表明することができる」という立場に基づき、自分と相手それぞれの意見を尊重しながらコミュニケーションを取る態度のことです。

3パターンのコミュニケーション

私たちが普段取るコミュニケーションの態度は大きく3種類に分けられます。上司から仕事を頼まれた部下のケースを例に説明します。

①攻撃的な態度(アクティブ)

上司「急なんだけど、昼までにこの書類を100部コピーしてくれるかな?」

部下「取引先から問い合わせがきて手が離せないんで無理です!」

上司「・・・(なんなんだこいつは!全く今どきの若者と来たら態度がなっとらん!)」

部下からすれば自分のペースで仕事をするためにはっきりと断われたという点はいいことなのですが、お願いをした上司の立場に立ってみましょう。

けんもほろろに断られてしまったため、部下に対してあまりいい印象を受けていません。これでは長期的な視点で良好な人間関係を維持することは難しいです。

②受動的な態度(ノン・アサーティブ)

上司「急なんだけど、昼までにこの書類を100部コピーしてくれるかな?」

部下「…はい、わかりました(午前中に返さなければいけないメールが山積みなのになぁ・・・)」

上司の言うことを素直に聞いているので表面上は良い関係が作れているようですが、他にやるべき仕事があることを説明できておらず、部下にとって非常に負担になります。

これでは他のタスクをこなすことができず、周りに迷惑をかけてしまうばかりか、断れない人間だと思われて要求がエスカレートしてしまいます。

ここまで挙げた二つのコミュニケーション態度は私たちが普段取ってしまいがち。しかしこれではお互いがお互いを尊重し合う良好なコミュニケーションが取れているとは言えません。

それではどのようにすれば良かったのかでしょうか。最後のパターンを見てみましょう。

③アサーティブ(自分も相手も尊重する態度)

上司「急で申し訳ないけど、昼までにこの書類を100部コピーしてくれるかな?」

部下「お手伝いしたいのはやまやまなのですが、今取引先からのお問い合わせ対応に追われていまして、午前中は手が離せません。昼からならコピーできると思うのですがいかがでしょう?」

上司「それはすまなかった。15時からの全体会議に出す資料だから昼過ぎからで構わない。他の人にも声をかけておくからみんなで分担してやってくれ」

ここで部下はアサーションを意識したコミュニケーションを行いました。その結果自分のスケジュールにさして影響を与えることなく、人間関係も良好に保つことができましたね。

このようにアサーションは相手と自分お互いの考えを尊重するコミュニケーション手法なのです。

アサーショントレーニングをすることのメリット

それではアサーションを意識したコミュニケーションをすることのメリット。つまり、本記事におけるアサーショントレーニングをする事のメリットは以下の2つが挙げられます。

自分の意見を言えるようになる

まず、自分の意見を言いやすくなるということです。

相手の意見を尊重しながら自己主張するというやり方ですので「自分の意見を言って相手を傷つけたらどうしよう」と心配してしまいがちな人でも比較的楽に自己主張ができます。

自分の意見を出さず相手の言うがままになってしまうことは自分に余計なストレスをかける原因です。

近年、職場の人間関係上の悩みでうつ病などのメンタルヘルス疾患にかかる人が増えていますが、うつ病になりやすい性格傾向の一つとして「相手の言うことを素直に聞きすぎる良い人」タイプがあります。

上司の言うことを聞きすぎて長時間労働や休日出勤などを断れないタイプの人はやはりメンタルに負担がかかりやすいということでしょう。

そうならないためにもある程度は自分の意見を表明することは必要なのです。

相手の心象を害さない

自分の意見を言ったり、相手の頼み事を断ったりすることは相手を不快な気分にさせてしまうというリスクがあります。

また、人間は自分を承認してもらいたい生き物、自分の意見や思いを否定されることで自分を否定されていると感じ傷ついてしまいやすいです。

相手の思いはしっかり受け取っているということを言葉で示すことで、たとえ断られたとしても「この人は自分を受け入れてくれている」と感じます。

そうすることで自分の意見を聞いてもらいやすくもなるという副産物も生まれるのです。

アサーショントレーニング初心者編

それではアサーションを意識した表現を身に着けるためのトレーニング方法について紹介します。最初は初心者向けのトレーニングを行いましょう。

まずは紙とペンを用意してください。そしてこれまでの会社や家庭でのコミュニケーションでなんだかうまくいかなかったことを思い出してみましょう。

たとえば、上司から飲み会の誘いを受けたがあまり気乗りがしないので「いけません」と断ったところ、上司が「俺と飲むのがそんなに嫌なのか」と激高。1週間くらい気まずい状態が続いた。

このように当時の状況を具体的に思い出し紙の上半分に書いてください。ここまでの説明を読んでいたらなぜ上司が激高したのかわかりますね。そのうえで以下3つを下半分に書いてください。

  • 相手の気持ち
  • 自分の意見・主張
  • 提案

相手の気持ち

まずは相手の気持ちです。多くの場合ですが上司が飲み会に誘う理由は「親交を深めたい」「仕事のアドバイスをしたい」といった理由が多いですよね。

その他にも様々な理由がありますが、上司は誰もあなたに危害を加えようとして誘っているわけではありません。相手の気持ちがわかったらそれに対する純粋な気持ちも合わせて書いてください。

【具体例】たぶん上司は自分へ仕事上のアドバイスをしたいと思って飲み会に誘ったのだろう。それについては非常にありがたいことだ。

言うべきところは言う

次に自分の意見について書きましょう。ただこの場合「あまり気乗りがしない」と言うのは理由になっていないのでなぜ行きたくないのか具体的な理由について考えてみるべきです。

例えば「睡眠時間が取れない」「帰りが遅くなる」などが理由の一つとして上がるのではないでしょうか。理由がわかったら自分の意見と理由を書き出しましょう。

【具体例】帰りが遅くなると翌日の仕事に支障が出てしまうので、飲み会には行きたくない。

提案をする

相手の気持ちを汲み取って自分の意見を表明するだけでも大分アサーションを意識した表現になるのですが、これではまだまだ相手の思いを大切にしたことにはなりません。

そこで別の提案を考えてください。この場合だと例えば「仕事に支障の出ない週末にリスケする」「一緒にランチに行く」などの提案が考えられそうですね。

そのうえで自分の希望に合った提案を書き出してみましょう。

【具体例】一緒にランチに行く。

さて、これでアサーションを意識した表現に大切な要素がそろいました。

ここまで書けたら下半分を組み合わせてアサーションな主張を作りましょう。左から順に要点を説明してみてください。そうすると以下のようになりますね?

「お誘いいただきありがたいですし、自分もお話を聞きたいのですが、帰りが遅くなってしまうと翌日の業務に支障が出てしまうので飲み会は遠慮させていただきたいです。そこで、昼休みに一緒にランチに行きませんか?」

このようにすれば自分の意見も相手の気持ちも大切にしたコミュニケーションができますよね。

なお、ポイントですが、相手の気持ちをそのままいう必要はありません。ここで書いた相手の気持ちはあくまで推測ですので感謝の気持ちだけで十分です。

アサーショントレーニングの初心者編では、これまでの経験ですこし失敗したと思う例を振り返りましょう。

その上でどのようにすれば相手も自分も大切にしたコミュニケーションができたのかを考えていくことが大事です。

アサーショントレーニング応用編

続いて応用編です。ここまで初心者向けのアサーショントレーニングについて説明しましたが、現実のコミュニケーションはこれだけではうまくいかない事も多々あります。

例えばランチの提案をしても上司が愛妻弁当を持ってきていたらその提案は受け入れがたいものになりますよね。

アサーションを意識した表現で忘れてはいけないのは「相手も自分の要求を拒否する権利があること」です。

つまり良好なコミュニケーションを行うためには相手が要求を受け入れなかった場合も考えなくてはなりません。

DESC法を用いる

そこでおすすめなのがDESC法。

これは自分の言いたいことを4つのパーツに分解して話す方法で、客観的に自分の意見を伝えられるため相手に伝わりやすいというメリットがあります。

今回は「友人が待ち合わせの際しょっちゅう遅刻して困っている」という事例をもとにDESC法のやり方を解説します。

D(Describe・状況描写)

まず、状況を客観的に書き出してみましょう。この場合だと「友人がしょっちゅう遅刻する」「今回も遅刻した」と言ったところでしょうか。

E(Exprain・気持ちの説明)

次にそれに対しての自分の率直な気持ちを書いてください。「腹が立つ」「悲しい」「心配になる」などいろいろありますが思いつくだけ書いてみましょう。

S(Suggest・要求)

そのうえで自分の要求を表明します。「遅刻しないようにしてほしい」などですね。

C(Choose・妥協案)

そしてこれがDESC法の根幹とも言える部分です。相手が自分の要求を受け入れた場合だけでなく、断った場合の現実的な妥協案を書いてください。

「遅刻しない」のが無理ならせめて「遅れることがわかったら事前に連絡する」といった妥協案を提案してみましょう。

なお、DESC法を用いた表現をするときにはこのCの妥協案部分から考えるとより現実的かつ伝わりやすい表現ができます。

妥協案自体を自分の本当の要求にしてSをややハードルが高い要求にすることで本当の要求が通りやすくなります。

さて、これらをまとめるとこのようなやり取りになりますよね。

自分「前回前々回に引き続き今回も遅刻したよね?僕としては君との楽しい時間が減ってしまうから悲しいと感じているんだ。今度から遅刻しないようにしてくれないか?」

友人がYESの場合

自分「ありがとう。よろしくね」

友人がNOの場合

自分「それじゃあ遅刻する30分前には電話かメールで連絡してくれないかな?」

このようにすることで相手に自分の意見が通りやすくなります。DESC法は家庭生活やビジネスの値段交渉の場などでも有効に自分の意見を表明でできる手段なのでぜひチャレンジしてください。

このトレーニングも先ほどの初心者編と同じように過去のコミュニケーション失敗事例を振り返って紙に書き出しながら練習してみるのがおすすめの方法です。

トレーニング時のコツ

ここまで二つのトレーニング手法について説明しましたが、効果を高めるために意識してほしいことや小技的なテクニックについても紹介します。

毎日寝る前にやる

効果を高めるために書き出す作業を1日の終わりにしましょう。寝る前に自分のコミュニケーションを振り帰り、アクティブ(攻撃的)すぎたり、ノン・アサーティブ(受動的)だったりしたやり取りを書き出してください。

そうすることで自分のコミュニケーションの傾向が大まかに把握できます。

アクティブな態度を取りやすい人はトレーニングの中でも相手の気持ちを汲み取る練習を、ノン・アサーティブ傾向の人は自分の意見と理由を考える練習に重点を置いてみてください。

そうすることでより効率的なトレーニングができます。

相手を否定しない

これもトレーニング効果を高めるポイントなのですが、相手を否定しては良好なコミュニケーションは成り立ちませんよね。

相手の意見は意見としてひとまず受け入れてください。ちょうど先ほど挙げた飲み会の例で「気乗りがしない」という言葉をアサーティブな表現の中で使っていなかったのを覚えていますか?

ただ単に帰りが遅くなるからそう感じたのかも知れませんが、「気乗りがしない」というのは相手には「あなたと飲んでもつまらない、楽しくない」と言っているように聞こえてしまいます。

これは相手の人格そのものや意見を否定してしまうことに繋がります。

アサーションを意識する目的はあくまで良好なコミュニケーションを作ること。相手を否定するような言葉は使わないようにしましょう。

メールを使う

トレーニングをしているだけではいけません。実践でしっかり使うことがアサーション上達の鍵です。しかし、いきなり会話でアサーティブな表現をするのは難しいもの。

そこでおすすめなのが、メールを使って自分の意見を表明してみることです。文章なら送信前に何度も校正ができるのでより良い表現で相手に伝えられやすいです。

保留する

会話ですぐに受け答えをするのが苦手な人の場合、いったん回答を保留して後で意見を述べるというのも手です。

例えば飲み会に誘われたとき「申し訳ないのですが、ちょっと手帳を確認するので待っていただけますか」ということでアサーションを意識した断り方を考える時間ができます。

ただこの時も「ちょっと待ってください」だけでなくアサーティブに待ってもらうようお願いするのがいいですよ。

毎日の振り返りであなたもコミュニケーション強者に

アサーショントレーニングを行うことで、相手を不快な気持ちにさせることなく自分の意見を表明しやすくなります。

アサーティブな表現を行う上で一番大切なのは「相手も自分も大事にすること」です。

相手ばかり大事にするとノン・アサーティブな「自分がない」人間になりますし、自分だけになるとアクティブな「自己中」と言われてしまいます。

まずは毎日、家庭や職場のコミュニケーションを振り返り自分が普段どういった態度でコミュニケーションをしてしまいがちなのか冷静に分析してみましょう。

その上でどうすればよりアサーティブなやり取りができたのか紙に書き出しながら考えてみてください。

トレーニングを始めたからと言ってすぐに成果が出るわけではありませんが、毎日続けていくことで徐々にあなたのコミュニケーション能力も上がっていきます。

この記事を読まれた方の人間関係が少しでも良好なものになることを願っています。

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