パワハラ手法「ダブル・バインド」の心理的特徴と対処法

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仕事でも、プライベートでも、誰かの指示に従うように行動しなければならない場面や、お願いを聞いてあげる場面は、きっと少なくはないことでしょう。

しかし、指示や依頼の内容があいまいで、尋ねたら「自分で考えろ」と言われ、自分で考えた結果について報告や相談をしたら、「どうして勝手な解釈をするのだ」と激しく問い詰められる。

そんな体験をしたことがあったり、まさにそれに悩んでいる場合、もしかしたらダブル・バインドに陥れられているかもしれません。

ダブル・バインドとは

2つの矛盾したメッセージをもって、相手とコミュニケーションをすることで、相手の思考や行動を拘束してしまうことを、「ダブル・バインド」といいます。「ダブル」は「2つ」、「バインド」は、「拘束すること」を言います。

冒頭の事例では、「自分で考えろ」というメッセージと、「勝手な解釈をするな」というメッセージが、それぞれ矛盾した関係にあります。そして、2つの矛盾したメッセージを受け取った側は、どちらをとってコミュニケーションをすればよいのかわからなくなり、途方に暮れてしまいます。

また、こういうコミュニケーションをとる人に対し、「では、どこまで自分で考えてよい範囲なのですか」と尋ねても、たいていの場合は、また明言を避けます。たとえば、それが仕事の場面であれば、次のような返答が返されることになります。

「それを考えて行動するのが、君の仕事だろう。」

「そんなこともわからないで仕事をしようなんて、本気なのか。」

「一から十まで教えてもらえるのは、学生のうちまでだ。」

どれも、上司や先輩から言われてしまうと、もっともらしく聞こえることもあります。しかし、自分に与えられた裁量の範囲は、結局明らかになることがないまま、次のステップに進めなければならなくなります。

それが繰り返されるうちに、指示を出される側は、「質問してもしなくても、建設的なおはなしなどできない」とあきらめるようになります。やがて、指示を出される場面に限らずとも、自信を喪失し、最悪の場合は精神疾患に罹るケースもあります。

そして、ダブル・バインドは仕事だけでなく、親子や先生生徒など上下関係がある関係性では、起こりうる話です。

これってひょっとして、ダブル・バインド?

どちらともつかない指示や依頼をされた場合、まず自分が相手に、指示や依頼の内容を確認できるかを考えてみましょう。

確認できないと判断した場合、その理由に相手に対する恐怖があれば、まずあなたはダブル・バインドによりコントロールされている状態であるととらえましょう。その恐怖の原因は、あなたが相手の心理的な優位性に圧倒されていることです。

恐怖を感じることがなくても、相手の指示や依頼がどちらともつかないものでは、あなたがどうしたらよいのか困ってしまいます。この時点で、指示や依頼を遂行することについて、「正解」は相手の考えひとつという状態です。

この場合も、相手からは、ダブル・バインドを匂わせる危険信号が出ています。

どんな人がダブル・バインドに陥りやすいのか

ズバリ言います。自分に自信がない人です。相手はまさに、自信のないあなたを、自分の感情のままにコントロールしたいのです。

そうはいっても、年功序列社会が長かった日本では、先輩と後輩、上司と部下、親と子といった、暗黙の上下関係があります。

かつては、上位者が下位者にどんなに厳しい言葉を浴びせても、なんらかのフォローをする風潮がありました。上司が部下を飲みに連れていき、話をきいてあげることや、親が子の言い分をあとで冷静に受け止めることなど、上位者にも心の余裕がありました。

しかし、今の世の中では、良くも悪くも、みんな自分の事で精一杯です。上位者も下位者に対し、心の余裕がないといって、ダブル・バインドでふさがった心に対する手当はなされません。それどころか、「指導」と称して正当化までされてしまいます。

こうした上下関係は、あなたの心が、自信のない状態のままで固定されてしまうことを、助長しています。言うことに従わなければ、力関係の下位とみなされたあなたは、不利益な取り扱いを受けることは、想像に難くないでしょう。

自信のない状態に気付いたら、そこから脱却したいとは思うのが自然です。しかし、ダブル・バインドのマインドコントロールにかかってしまっていると、脱却しようにも、暗黙の上下関係が恐怖となって、足かせになってしまうのです。

また、真面目であれば、もっとダブル・バインドに陥りやすいです。それは、暗黙の上下関係を破ってまで、相手との関係性を壊すことが美徳ではないと考えるからです。

どんな人がダブル・バインドを使うのか?

こちらもハッキリと言います。自分に自信のない人です。

自信があれば、相手への指示や依頼は明確であるはずですし、相手からの質問にも適切な回答ができるはずです。しかし、自分に自信がない状態で、相手より立場上優位になることがあれば、ダブル・バインドによって相手を困らせたり意のままにしたりすることで、足りない自信の埋め合わせをしようとすることがあります。

ましてや、自信がないということは、長い間不安感や不満感に心をむしばまれてきた可能性もあります。そして、自制心が働かない限り、自分より下位とみなした人間には、自分がされて辛かったことは、経験の為だとかもっともらしいことを言って、自分より下位者も体験すべきという負の連鎖を生みます。

つまり、ダブル・バインドによるマインドコントロールを仕掛けようとする人は、その人自身も、ダブル・バインドによるマインドコントロールの被害者です。それくらい強烈なインパクトと心の傷を、相手に与えてしまう行為です。

ダブル・バインドに陥れられたと思ったら

どうしても進めなければならない話で、話が進む前でしたら、相手の発言のあいまいな部分は、嫌でも確認しなければ、他の人に迷惑をかけてしまう可能性もあります。どのみち文句を言われるのであれば、最初に言われておいた方が楽です。

ただ、正面切って「あなたの言っていることがあいまいで理解できない」というと、「君は日本語も通じないのか」などと言われ、はぐらかされるおそれもあります。

そこで、クッション言葉を使うことが有効です。「理解力が足りなくて申し訳ないのですが、これはこういうことでよろしいでしょうか。間違っていたら、理由も含めて教えて頂けますか。」と、やわらかく確認します。そして、相手の自尊心のなさを受け止める寛容な心と、話を進めるためにはっきりしてもらうという厳しい心を用意します。

ダブル・バインドを使ってくる相手も相手で、自信のなさをごまかしています。そういう相手から、大切な情報はきちんと確認するには、自尊心を傷つけないようにすることが大切です。

ただし、相手によっては、「わざわざへりくだるような言い方をして、自分のことを馬鹿にしているのか」と逆上するパターンもあります。そういうときは、「本当に呑み込みが悪くて申し訳ないのですが、自分のできる最善のことを一生懸命したいので、お手数ですがお願いします。」と、あくまでも低姿勢を貫きます。

確認したにもかかわらず、相手が望んでいない結果になってしまった場合は、どれだけ素直に謝罪しても、「あれだけ言ったのに、なぜまだわからないのか」という言い方をされることもあります。

これに対して、考えられる理由をいくら低姿勢で述べても「言い訳するな」や「それはその場合とは違う」など、また違った次の揺さぶりがかけられます。

その場合は、「なぜ、と理由を求められたので、考えられる理由を述べました。それが言い訳だとおっしゃるのであれば、なぜそれが言い訳であるのか、お手数ですが、説明して頂けませんか。」と、あくまで冷静な態度で、回答を求めましょう。

相手は自信の無さをハッタリでごまかすために、ダブル・バインドを用いているわけですから、熱くなって感情的な話し方になりがちです。相手の自信のなさを寛容な気持ちで受け止めるようにしながら、あくまで冷静に、誠実に、理路整然とした回答を求める厳しさも持った姿勢を貫きましょう。

これ以上ダブル・バインドで操られないために

ダブル・バインドを仕掛けてくる人に対して、寛容な気持ちで、冷静に、誠実に接することで、マインドコントロールを解いてくれればよいのですが、そうはいかないこともあります。

なぜなら、あなたを思いのままにすることの味を占めた相手は、あなたの自信が次第に弱っていくことを確かめ、あなたの心を完全に揺さぶりにかけてきます。

あなたの寛容さや我慢にも、限界を迎えるときがあります。そのときは、あなた自身も、相手との関係を壊してでも、真っ向から向き合う覚悟が必要です。そして、相手にも自信がないということを利用するのです。

たとえば、「自分で考えろ」という指示と、「勝手な判断をするな」という指示を出す相手がいたとします。

「自分で考えろ」の指示があった時点で、「一緒に考えていただけませんか」と提案し、それが却下されたら、「わかりました。自分で考えろ、ということですね。お任せいただいたということで、よろしいですね。」と、相手の指示を復唱します。

相手は馬鹿にされたと思い、焦りや怒りをあらわにしますが、そんな人の満足感のためだけに、あなたの貴重な時間や考えをこれ以上割くことは無駄です。

次に、考えた結果を報告する際に、「勝手な判断をするな」という指示があったとします。

あくまでも冷静に、「一緒に考えていただけませんか、とお願いしましたが、却下されたため、自分で考えました。自分で考えろ、とおっしゃいましたよね。」と、最初の指示を復唱しながら反論します。

相手は、自分の優位性を主張し、いい結果だけをかすめとる権利を持っていると勘違いしています。あなたは、それが誤りであるということを、毅然とした態度で示さなければなりません。

関係が壊れるという恐怖が先立ちますが、人を思いのままにマインドコントロールしようとする相手との関係は、良好なものではありません。そして、そういう人からは、やがて人が離れていきます。相手がその時に気付いても、もう遅いのです。

人間関係は、その人とだけ築けばよいものでもありませんし、同じ組織や所属の内部だけ築けばよいというものでもありません。

仕事だから、食べさせてもらっているから、など、引け目を感じてしまっても、それがずっと続くわけではありません。自分の心身を壊してしまっては、何にもなりません。自分の心を守れるのは、自分しかいないのです。

まとめ

まずは、相手が自信のなさを、あなたに対する優越感で補おうとしていることに気づくことです。そして、置かれている状況を冷静に観察し、一歩引くか戦うかを選択することです。

いずれにしても、相手のダブル・バインドに対して、毅然として「受け入れない」という姿勢を保つことで、あなたはダブル・バインドから解放され、次に自分がとるべき行動のために自分の時間や考えを割くことができます。

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