【専門家が解説】休職中の過ごし方から休職手当・復職まで徹底解説

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競争社会と呼ばれる現代社会、メンタル面にストレスを抱える労働者は増えています。

独立行政法人労働政策・研修機構の調査によると、全体の50%以上の企業で休職者が発生。メンタルヘルス疾患で休職してしまうことはもはや他人事ではありません。

もちろん、うつにならないよう予防するのが最善策ですが、万が一うつ病で休職した時、どのように過ごせばいいのかを知っておくのも大切です。

そこで本記事ではうつ病をはじめとするメンタルヘルス疾患での休職の見極め方、休職期間中に知っておきたいことを紹介します。

※企業での人事の専門家であり、休職経験した方が書いた記事です。

休職するかどうかを見極める3つの視点

長時間労働や人間関係のトラブルによって、高ストレス状態に陥ったとき、まず判断してほしいのは「働きながら改善できるか、休職しないと回復しないか」ということです。

うつの状態が軽度であれば働きながらでも、精神科への通院や服薬で症状の改善が期待できます。しかし、中程度以上になると、休職した方が確実です。

自分の症状がどの程度か見極めるためには以下の3つの視点で自分を振り返る必要があります。

体調面

うつ病は単なる気分の問題ではなく、長期間のストレスにより脳が機能障害を起こした状態です。そのため、体調面でも様々な症状が現れます。

主に身体のリズムを調節する自律神経の働きが悪くなるため以下の症状が現れる場合が多いです。

  • 動悸
  • 頭痛
  • 肩こり、腰痛
  • 便秘
  • めまい、たちくらみ

これらの症状はうつ病の初期から中期にかけて発生するもので、初期の時点で精神科医による治療を受ければ比較的早期に回復します。

しかし多くの場合、内科など精神科以外の病院に行ってしまい、精密検査を受けても原因がはっきりせず、治療が遅れてしまうこともあるため注意が必要です。

原因がはっきりとしない症状が2週間以上続いている場合は精神科を受診することをおすすめします。

また、身体に現れる症状だけで休職するかどうかの判断はつけづらいのが現状です。精神的な落ち込みなどの症状が出ていない場合本人と主治医の判断にゆだねられます。

行動面

うつ病になると、脳の働きが弱くなり行動面でも様々な変調が発生します。

  • 朝起きられない、眠れない
  • 仕事でケアレスミスを繰り返すようになった
  • 些細なことで怒ってしまう
  • 物忘れが多くなった

などその人のおかれた状況や立場によって多種多様ですが他人から「いつもと違う」という指摘を受けるケースが多いです。

このような指摘を受けたり、仕事で失敗が増えたりしたときはまずは精神科を受診してください。1ヵ月以上長期にわたって続くようなら休職も検討しなければいけません。

精神面

うつ病の症状で最も典型的なのが精神面の変化です。うつ病の初期には「なんとかしなければ」という焦燥感が募る場合が多く以下のような症状が現れます。

  • ソワソワと歩き回る
  • イライラする

この時点で適切な治療を行えば早期回復が可能なのですが見落とされてしまいがちです。

中期になってくると悲しさと虚しさが入り混じった感情が現れます。

  • 何をしても寂しい
  • 理由もないのに泣き出してしまう
  • 今まで楽しめていた趣味をしても楽しくない
  • やる気が起きない

このような状態でも精神科に通院し、適切な投薬治療と業務負荷の調整を行えば働きながら症状を軽快させることは可能です。

しかし、真面目な性格の人は「こんな気持ちになるのは自分の努力が足りないからだ」と余計に追い詰めてしまいさらに重度な精神状態になってしまいます。

精神面で最も重度な状態では

  • 死にたいと思う
  • 悲しいことがあっても何も感じなくなる

といった精神状態になります。この場合はすぐにでも休職すべきですし、場合によっては入院が必要になることもあります。

休職すべきかどうかの見極めのポイントをシンプルにまとめると以下2点です。

  1. 業務や日常生活に支障が出ている
  2. 短期的なものでなく2週間以上続いている

業務や日常生活に支障が出ている状況ですとトラブルを引き起こしてしまうこと自体がストレス要因となり、治療の妨げになってします。

また、短期的なものは時間が経つと軽快しますが2週間以上続く慢性化した状態だと医師の治療が必要になります。

再び休職しないためにも休職中の過ごし方は大事

「休職後何週間か経過し、少し動けるようになってきた。早く仕事に戻らなければ今後のキャリアにも影響を与えかねない」と言って焦ってすぐに復職してしまうのは考えものです。

独立行政法人労働政策・研修機構の調査結果によると、うつ病の再発率は40%以上。復職した5人の内2人が再度休職してしまうことを示しています。

うつ病の再発を防ぐためには休職期間どのように過ごすかがカギになります。

下のグラフを見てください。これはうつ病の回復過程を示したグラフです。縦軸が活動性、横軸が時間を表しています。

このようにうつ病の回復過程においては症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に寛解へと向かいます。

散歩や家事ができるようになったからと言ってすぐに復職をして今まで通りに残業や出張をするのは、5キロジョギングができる体力が付いたばかりなのに、その状態でフルマラソンに挑戦するのと同じこと。

せっかく復職できたのにうつが再発し、休職を繰り返してしまう原因になります。

以前のパフォーマンスを取り戻すためにも、十分な休養を取ったあとは職場復帰に向けたリハビリを行い、復職してからも一定期間は負荷の低い業務を担当しながら徐々に慣れていくことが望ましい過ごし方です。

休職期間は「充電期間」と捉えよう

それでは具体的に休職期間の過ごし方について説明します。

まず、休職直後はおそらく日常の家事もままならず、ただベッドで寝るだけという状態になりますがそれで構いません。

うつ病を治すために一番大事なのは十分な睡眠です。処方された薬をスケジュール通りに飲みながらとにかく体を休めることだけを考えて下さい。

「もう寝るだけの生活も飽きてきた、少し外出してみようかな」と思い始めたら次のステップに進むタイミングです。

ここでのポイントは焦らないこと。「寝ているだけの状態ではいけない、早く動けるようにならなければ」と思っているうちは時期尚早です。

休職時に経済的負担を抑える方法

焦らないと言われても経済的な面の不安から「早く働かなければ」と思ってしまいがちですよね。

家族がいる人ならなおさらです。経済的な不安を抱えながら休職するというのは回復を妨げる原因となります。そこで休職時に経済的負担を抑える方法を二つ紹介します。

障害者自立支援制度で医療費を安くする

休職中に最も心配なのは医療費の負担です。定期的な診察や薬代は家計を圧迫しがち。しかし、障害者自立支援制度を利用すれば月々の医療費負担を大きく抑えることができます。

具体的には

  • 医療費が3割負担から1割負担になる
  • 月々の医療費上限額が設定され、医療費がそれ以上かからない

上限額については住民税納付額によって変わりますが、最大でも2万円が上限となります。

この制度を利用するためのステップについても説明します。

  1. お住まいの市区町村役場で申請用紙を貰う
  2. 主治医に自立支援申請用の診断書を書いてもらう
  3. 申請用紙に必要事項を記入し、診断書とともに役場に提出
  4. 申請が許可された場合およそ一か月後に証明書が発行される
  5. 証明書を医療機関や薬局の窓口で提示すると医療費が安くなる

なお、自立支援申請用の診断書はやや複雑な形式のため書いてもらうときにやや時間がかかります。できるだけ早めに主治医の先生に相談するようにしましょう。

参考:うつ病で障害者手帳?取得経験者が語る取得方法とメリット5つ

傷病手当金の申請を行う

傷病手当金とは一定期間以上休業した場合に健康保険組合から支払われるお金のことです。

金額は月給の7割程度ですがこれも健康保険に加入している人なら貰えるお金なので生活費に充てる意味でも必ず申請してください。

申請の方法は

  1. 健康保険組合に連絡し申請用紙を貰う
  2. 必要事項を記入し、主治医に証明してもらう
  3. 健康保険組合に送付する

お勤めの企業によっては健康保険組合ではなく、人事部が申請用紙を送ってくれる場合もあります。詳しくは人事担当者に確認してみましょう。

医師の指示を守ろう

休職中に必ず守ってほしいことがあります。それは主治医の言うことは必ず守ることです。

少し症状が軽快してきたからといって自己判断で服薬を止めてしまったり、病気の理解がない人に言われて怪しいサプリメントや民間療法に頼ってしまったりすることがあります。

薬の中には急に止めてしまうと離脱症状によって体調が悪化してしまう場合もあるため、薬を減らしたい、止めたい場合は必ず主治医と相談してください。

また、民間療法の中には効果のない治療を非常に高額で行うものがあります。

それがその人の心の支えとなり、病状が良い方向に進めばいいのですが、経済的負担のストレスからかえって悪化してしまうリスクもあるため慎重にならなければいけません。

どうしても利用したいと考える人はこれも主治医との相談が必要です。

元気になってきたらリハビリ開始

寝たきりの生活に飽き、少し動いてみようかなという気持ちになったらリハビリを始めましょう。ここでは大きく4つのステップに分けて解説します。

1.睡眠リズムを整える

まず、睡眠リズムを整えてみましょう。例えば朝の7時から夜の22時まではベッドに入らないという目標で構いません。

ベッドに入らない時間帯は読書をしたりゲームをしたりと自分の好きな事をやってください。

ここでいきなり業務に関係する資格の勉強をしてしまうのは高ストレス下に自分を置いてしまうことに繋がります。あくまで決めた時間に睡眠をとることだけを目標にしましょう。

2.家事、散歩

決めた睡眠リズムを2週間以上行えるようになったら続いて家事や散歩を日課にします。特に散歩をすると日光を浴び、体内時計も調整されるので必ず行ってください。

家事も散歩も最初は10分だけでも構いません。徐々にできることや時間を増やしていきましょう。

3.通勤訓練

普段の休日並みに活動性が上がってきたら続いて通勤訓練にチャレンジです。

まずは電車に一駅分乗ってみることから始めましょう。いきなり満員電車に乗るのはかなり負荷が高いので平日の昼間がおすすめです。

空いている時間帯に会社の最寄り駅まで行けるようになったら、次は朝の満員電車に乗りましょう。この時、会社の同僚とばったり鉢合わせするのが心配な方は少し時間をずらしてもかまいません。

4.資格勉強や読書

平日の五日間ちゃんと電車に乗れるようになったら次は図書館で時間を決めて読書や資格の勉強をしてください。9時から5時まで図書館にいるといった具合に仕事をしていた時の生活リズムに近づけていきます。

ただ、いきなり長時間は難しいので、最初は午前中だけ、慣れてきたら1時間追加と言った具合にこれも徐々に負荷を上げていきましょう。

捕捉:生活記録表を付けよう

復職のリハビリ期間は生活のリズムを整え、職場復帰をスムーズにすることが最大の目的です。

そのため生活記録表を作って毎日何をしたかを記入しましょう。以下のような表をエクセルで作ると便利です。

生活記録表を作ることで自分がいまどのステップにいるのか明確に分かるだけでなく、主治医や産業医との面談時にも適切なアドバイスが受けやすくなります。

リハビリをサポートする医療サービス

ここまでリハビリ期間の過ごし方について段階を追って説明しましたが実際にこれを自分一人で行うのは大変な労力がかかります。

そこでリハビリをスムーズに進めるための医療サービスについて紹介します。

リワーク

リワークとはメンタルクリニックなどの医療機関が行うリハビリです。リワークでは決められた時間、資格勉強や読書などの個人学習をしたり、他の参加者とグループワークを行ったりします。

リワークの最大のメリットは臨床心理士など心理専門職による講義が受けられる点です。

講義内容としては以下のようなものがあります。

  • 認知行動療法
  • うつ病の理解を深める学習
  • ・コミュニケーション訓練
  • タイムマネジメント
  • ストレス対処方法

これらの内容を学ぶことで、うつ病の再発予防にもなります。また、同じ病気を抱えた人とコミュニケーションをとることができるのも大きなポイント。

同じ立場で悩みを打ち明けられる居場所があるのは本人の安心につながります。リワークを利用したい場合はまず、主治医か産業医に相談してみましょう。

メンタルクリニックによってはリワーク施設がないため、他の施設に紹介状を書かなければいけないケースがあります。

カウンセリング

まだ大人数で講義を受けることに抵抗がある場合は一対一のカウンセリングを受けてみるという手もあります。

カウンセリングではストレスをためやすい自分の性格や考え方について、カウンセラーと二人三脚で気付き、ストレスを溜めにくいように考え方を修正していくことができます。これもうつ病の再発防止に有効な手段です。

ただし、医療機関によっては保険が効かない自費診療になってしまったり、保険適用でも予約が取りづらかったりする場合がありますので注意してください。

復職をするタイミングとは?

復職をするためには以下の3つの要素を満たしている必要があります。

1.焦っていないか

ここまで何度も出てきた言葉ですが、「早く復職しなければ」という焦った気持ちを持っている場合はまだ時期尚早です。

「この生活にも飽きてきたし、そろそろ働いてみようかな?」という気持ちになったときが復職を検討するタイミング。焦りのないおおらかな気持ちになるのが第一条件です。

2.生活リズムは整っているか

復職後の労働条件が時短勤務なのかフルタイム勤務なのか職場によってまちまちですが、どの場合でも起床と就寝や食事などの生活リズムが規則正しく整っていることが必要です。

生活記録表を見直し、ちゃんと朝起きれているか、三食きっちり食べられているか確認しましょう。

3.休職の原因がわかっているか

復職してもまたうつ病が再発してしまってはいけません。再発を防止するためにもなぜ自分が休職するに至ったのかをまとめてみましょう。

具体的には以下のような視点で考えてみるのがいいです。

  • 自分が体調が悪くなった時のサイン(例:眠れない、頭痛など)
  • 自分がストレスをためやすい要因(例:思ったことを言えない、心配性など)
  • 調子を崩すことになったきっかけ(例:長時間労働、パワハラなど)
  • 今後体調を崩しかけた時に取るべき行動(例:主治医に相談する、ストレス解消手段としてジョギングをするなど)

このように、休職原因と再発防止策をまとめ、産業医や人事部と共有することで復職時に配慮して貰いやすくなります

例えば、ある顧客とのトラブルが原因で休職してしまった場合、復職時にはその顧客の担当を外してもらったり、別の部署に異動するなどの措置を取ってもらったりすることが多いです。

以上の3点を満たしてようやく復職を考えてもいいタイミングと言えるでしょう。ただし、企業によっては復職に向けてレポートや資格取得などの課題が課される場合もあります。

これは制度によってまちまちなので復職を考えられるタイミングで人事担当者に相談してみましょう。

まとめ

休職から復職に向けてのステップは大きく3つといえます。

  1. 睡眠を十分に取る休養期間
  2. 生活リズムを立て直すリハビリ期間
  3. 復職に向けて振り返りを行う調整期間

復職してからも企業によっては一定期間の時短勤務や残業制限が課せられることもあります。どのステップを飛ばしても安全な復職は難しいです。

復職をするために一番大切なことは焦らないこと。仮に短期間で復職が出来てもまた病気が再発してしまっては意味がありません。

時間がかかってもいいのでゆっくり確実にステップを踏んでいきましょう。

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